もしも明日が晴れならば プレイメモ ~chapter1"ghost"~

 もしも明日が晴れならば ~chapter1 "ghost"~

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帰った時はただいま

「ただいま、お兄ちゃん♪」

ぼくの方が先に玄関に上がっていたら、後ろからいきなりそんな挨拶をされてしまう。「…おかえり」

間違っちゃいないけど――ものすごく変な感じ。

「えへへ…っ、帰ってきたときは『ただいま』だもん」

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たとえ家に誰かいなくたって、『おかえり』という返事が返ってくることがないんだと分かっていたとしても、帰った時には『ただいま』。

つばさとしては、明穂がいた頃からの習慣になっていて特に考え無しに発してるんだろうけど、こういうのっていいよね。

自分も良くやっちゃいますが、こうすることで家という安心できる場所に帰ってきたという事を自分に言い聞かせる一種の儀式めいた意味があるのかなーなんて。

 

志村、後ろー!

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学校で見えた明穂の幻覚が家にも!つばさには見えないらしく悪戯だと思われる始末。

幽霊ならではの重力を無視した世にも珍しいこの立ち絵のポーズ、大好きです。

そして何よりこの悪戯そうな明穂の顔がまた!!

 

どんな姿でも

「ずっと…近くにいてくれたの?」

「……うん」

「怖くない、よ?たぶん…だけど」

「明穂のこと、怖いなんて思うわけない」

「ほんと?目を開けたら、骸骨みたいなのがカタカタ笑ってるかもしれないわよ?」

「それでも、明穂なら怖くない」

それが――僕の正直な気持ち。たとえどんな姿でも、明穂は僕の…大切な人なのだから。

 

 

明穂がどんな姿になっているのか目を開けて確かめる場面。

明穂は冗談っぽく言っているけど、この時どんな姿になってるか、それこそ主人公以上にとんでもなく不安だったんだろうなぁ。

だって年頃の女の子が、しかも好きな人に自分でもどうなってるかわからない姿を晒すわけですよ。

髑髏みたいなのでもオッケーってそりゃ口では簡単に言えるけど実際見た瞬間卒倒されるかもしれないわけで、某作の匂坂君みたく万が一ドロッドロした異形の姿と化した彼女を愛してくれる保証なんてどこにもなくて。

それでも明穂は見てもらう事を決めた。ただ一緒にいるためだけでなく、生前の様な関係を取り戻すことを願って。

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幽霊は成仏するもの

「だって、成仏しにくくなっちゃうじゃない。幽霊だから、いつかは成仏しなくちゃいけないと思うのよね」

「あ、でも、こうして見つけてくれたのはやっぱりうれしいのよ?またいつか、お別れになっちゃうのに…、矛盾してるね」

「ねぇ、カズちゃん。ごめんね。戻ってきたりしちゃって」

それが、どういう意味なのか――僕にはわかっていたけれど、分かりたくなんてなかったんだ。

 

再開できたことは嬉しい。けれどそれは同時にいずれ別れの瞬間がもう一度二人に訪れるであろうことを示していた。

新米幽霊として右も左も勝手が分からず不安でいっぱいのはずなのに、死してなお一樹とつばさの2人の事を心配するあまり成仏できずに還ってきた明穂は、幽霊の身になっても自分の事なんかよりも一樹の事ばかり気にかけている。

ここだけでなく、明穂の言動には一樹を始め、周囲の人間への感謝の気持ちと言葉が多くを占めているように思う。それは幽霊になって生じる不都合を何とかしてもらおうなどと言う打算的なものでもなんでもなく、彼女の素直な気持ちの表れなのではないだろう。やってもらってあたりまえでお礼を言うと負けの様に思うのか、あるいは自分には寛容な一方で他者の非は徹底して論うような人が増えてきているように思える今日この頃、明穂の様にみんなが素直に人に感謝の念を持てる様になればいいんだけどなぁ。 あぁ…明穂はほんとにええ子やでぇ。。

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やっぱり幽霊なんだね

「こーんなふうに…、うらめしや~~~~~」

「……」

「あれ?怖くない?」

「ご、ごめん…、一瞬卒倒しそうになった」

「ちょっと、人を化け物みたいに言わないでよ」

「……自分でやっておいて、それはないよ」

そもそも、実際に幽霊だし。

「それでも、顔見て卒倒されたら、女の子としてはそりゃーショックなものよ?」

だから、そういう問題じゃなくて…というかその人魂を何とかして」

「…これ?でも夜道を歩くには明るくて便利じゃない?」

 

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相変わらず楽観的と言うか、幽霊生活を謳歌しているような節すら感じ取れるこのやりとり。私たちは生前の明穂をほとんど知ることが出来ないわけですが、きっと夕立にあったりしたら同じように「シャワー浴びてるみたいで気持ちいいじゃない?」とか言いながら傘が無くても笑顔で走り回ってそうな気がするなーなんて。

 

 

どうして私に見えないの?

明穂の姿を見れる人は限られているため、それ以外の人間からすると一樹が”居ないはずの誰か”と話しているようにしか見えない。

つばさから最近兄がおかしいと相談を受けた珠美は、明穂が幽霊となって成仏できずにいると予想し、除霊を試みる。

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切りかかった珠美にとびかかってとめようとするつばさ。

「お姉ちゃん逃げて!どこにいるのかわかんないけど、早く逃げてっ!!」

「……つばさ」

寂しそうにつばさを見つめる視線は、今にも泣きだしそうで――

「逃げてっ!お姉ちゃんっ!お願い……っ!死んじゃ…いや、やだぁっ!!」

 姉の姿は見えずとも、胸の内に複雑な思いが去来しても、明穂が心配なことには変わりない。

「ずるい…よ。お兄ちゃんも、たまちゃんも!ずるいよっ!」

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 成仏なんてしたくない

自分のこと。一樹の事。つばさのこと。思い悩む明穂に、合歓の木の前で一樹は告白の再現をする。未練があるならそれが少しでも晴れるように、何かしてほしいことはないかと問われ、一日デートをすることとなる二人。一日の終わり、最後に訪れた思い出の丘で明穂は話し始める。

夕暮れの赤い光の中で、明穂は言った。

「カズちゃんだったら、とっくにわかってるでしょ!?心配だった、なんて、そんなの本当の理由じゃない!私があの世に行けなかったのは…、私の見れんって言うのは――」

そうだ。「デートしたい」なんていうくらいだから、本当の理由なんて、きまりきっている。

「わたしはただ…寂しかっただけ優しさなんかじゃなくて、ただの我儘なのよ…。もう少しだけ、カズちゃんの恋人でいたかっただけなのよ…」

 

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「何か、一つだけでもいいの。今までとは違う、恋人らしいことがしたかった…」

「それが、明穂の未練…?」

「そう…だと思う。だって、今年の夏は、そういう関係になるはずだったから…」

 

 積年の想いがついに実り恋人同士となったものの、キスの一つすらする間もなく死んでしまった明穂。彼女の未練は一樹と恋人らしいことをしたいと言うものだった。

例え触る事も触れることもできないとしても、それでも。二人の距離が近づいて行き、唇が重なった瞬間、奇跡が起きた。

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時間は止まらない。いつまでもこうしていたいけど、もうすぐあの夕日は沈んでしまう。

「約束…したのに。

いかなくちゃ…いけないのに。

未練……、もう…ないはずなのに……」

胸の奥が、締め付けられる。明穂は幽霊だから。これでお別れだから。

「…あきほ」

「さよならって…言わなくちゃ…なのに…」

――嫌だ。

「嫌…成仏なんて…したくない。私…っ、わたし…っ、やだ…、いや…、そんなの、いや……。やっぱり…わたし…っ、あの世なんて、行きたくないよぉお…っ!!!」

死してなお一樹やつばさの事を気に掛ける明穂の口から初めてこぼれ出た本音。

恋人として迎えるはずだった夏をほんの少しだけやり直すことが出来たものの、願いが叶えば叶うだけ、思いはつのるに決まっていた。

「未練なんて、なくならんやろ?

余計にあきらめがつかんようになったんとちゃいますか?

せやから、最初っから大人しく消えとけばよかったんや」

「私…、私は、少しでもカズちゃんと一緒にいたいの!カズちゃんとつばさの傍にいたいだけなのっ!成仏なんてしたくないのよぉ…っ」

望むことはただ一つだけ。なんてことはない、ただ家族で一緒にいたいだけ。誰もが望まずとも当然のように享受しているあたりまえの日常が今はとても遠かった。

「 明穂はさ。家族なんだ。」

「…そ、それがどないしたんですか」

「いや、違うかな、家族以上だよ。僕とつばさにとって、かけがえのない人なんだ。」

あの日から、僕たちは友達になった。

あの日から、僕たちはそれ以上の存在だった。

言うなれば、一つに混ざり合ってしまったんだ。

「明穂が戻ってきたのも、あたりまえなんだ」

「え…?な、なんで?」

「僕とつばさにとって、必要な人だから」

――だから、

「お願いします、珠美ちゃん。

珠美ちゃんにも事情があるのかもしれないけど、明穂のことは…見逃してほしい」

「幽霊でも…ええんか?」

「関係ないんだ」

「ずっと…、お姉ちゃんに遭いたかった。それだけなの」

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二人の説得により明穂を見逃してくれるらしい珠美。

去り際に姉のことが見えないつばさへ、なぜ見えないかについて助言をする。

「…ああ、それからな、つばさ」

「な…、なに?」

「幽霊視るのに、霊感とか…そういうんは関係あらへん」

「え……?」

「要は心の問題や。信じる者だけに見える。そういうもんや。

つばさは、心のどこかで会いたくないとも思ってる。怖がってる。だからや。

姉さんに会いたい思うんやったら、心の中でそう念じてみたらええ。

さっき、先輩が触れ単も、心の底から触りたいと思ったから。…それだけなんや。

一樹先輩と、明穂先輩と、両方が…な」

 

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「私が…、逢いたくない……、お姉ちゃんと…?

そんなはずないよ。だって、私は…」

「つばさ?」

「…うん、お兄ちゃんっ!

わたしは、お姉ちゃんに、会いたいよ」

まるで何かを吹っ切るみたいに、つばさは微笑んだ。

「教えて、お姉ちゃん…どこにいるの?」

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 両親を失っているつばさにとって明穂は唯一の肉親にして大切な姉。会いたくないなんて思っているはずがない!

しかし現実は一樹と、ましてやいくら霊感が強いとはいえ他人のはずの珠美には見えているにもかかわらず、つばさには見えないままだった。

ここまで見ているだけでは単につばさが鈍いのか情に薄い子なのか!?と疑ってしまうがそれは早計。これにはふかーい訳があって……というのは後に明かされるので今は詳しくは置いておきましょうか。

本当に大好きなのに、どうしても譲れないものもある。姉を失ってしまって悲しいのに、同時に邪魔者が消えたとそれをどこかで喜んでしまっている自分がいる。それが許せない。他の人には見えるのに、一番近いはずなのに見えない自分が情けない。

「お姉ちゃんに会いたいよ!」と言う部分のわずかな三点リードの間にどれだけつばさの複雑に絡んだ思いが去来しているかが察せられ何とも言えない気分になります。

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「私の方こそ…ごめんね、つばさの邪魔をしちゃったよね」

「そんなこと思わない…!お姉ちゃんのこと、邪魔になんて思うはずないよぉ!」

「ふふ…っ、無理しちゃって」

「…っ、してない…よぉっ、お姉ちゃんのこと、大好き…だからっ。

帰ってきてくれて、嬉しい…っ、ほんとに、嬉しい、からっ」

何度も何度も首を振りながら、つばさは明穂にすがりつく。

「…そうね、私も、つばさと話せて…嬉しい」

そんなつばさを前に主人公そっちのけですべてを理解し包み込むかのように優しく言葉をかける明穂ってばマジ天使!!

 

「カズちゃんとつばさのそばに、もう少しだけ、いさせてねーー」

 

to be continued…