ネタバレについて考える

ビックリマンチョコスターウォーズコラボ製品で、ダースベイダー卿のカードに「私はおまえの父だ」という超絶ネタバレがある、と言う記事を読んで大いに笑うとともに思わず考え込んでしまった。
なるほど、たしかに超絶ネタバレだ。
「ダースベイダーはルークスカイウォーカーの父親である」という"ネタ"は、スターウォーズに触れた事のあるファンにとっては、Zガンダムのクワトロ中尉はシャアである、と言うのと同じくらい「常識」といってもよい。しかし、新作映画の公開を機に、これから作品を見ようとする新規視聴者にとっては、エピソード4~6までを見てクライマックスで初めて明かされる"ネタ"を新鮮な目で見ることが出来なくなってしまったのだ。
とは言え今回の場合は非常に有名な作品である事、そして公開から長い年月が経っていることなどから、ネタバレと呼ぶに値しないだろう。しかし、ビックリマンというスターウォーズと消費者層が重なるかどうか微妙で判断に迷う製品においてそのネタバレがなされてしまうというのは、配慮に欠ける点があるように思う。

ネタバレとは、作品(小説、劇、映画、漫画、ゲームなど)の内容のうちの、物語上の仕掛けや結末といった重要な部分を暴露してしまうこと。またはその情報のこと。(Wikipediaより)
要するに作品中において視聴者が得られる情報(伏線)を、本来接することのできる時点よりも先に得てしまった場合、それはネタバレをされた、と言う事になる。

作品に触れていく上でセンスオブワンダーこそ一番大切にすべき要素であると感じている自分としては、ネタバレされてしまうような事態はなるべく避けたいものだし、また人に作品を紹介する機会がある以上図らずもネタバレしてしまうような事態も避けたいものである。
しかしそれは中々難しい。
上記は極端な例だったが、これをアニメやゲームに置き換えてみよう。最近のアニメに触れた事のある人間にとって、魔法少女まどかマギカは単なる魔法少女たちのリリカルマジカルな日々を描いたアニメではないことは周知の事実であろう。放送当時、冒頭三話にして巴マミが●されてしまい、視聴者が阿鼻叫喚に陥ったのは記憶に新しい。右も左も分からない主人公を暖かく支える先輩として主要登場キャラクターと目されていたマミさんが早々に退場してしまうと言う伏線は、アニメに日常的に触れる事のある人間にとっては常識と言っても良い。

突然だが機動戦艦ナデシコについては話そう。機動戦艦ナデシコでは、右も左も分からない主人公を熱く支える?先輩キャラクターがいるが、彼もまた三話で突然命を落としてしまう。これはナデシコを知っている層(古くからのアニメ視聴者やスパロボプレイヤーあたりだろうか)にとっては常識であろうが、そうで無い人間にとってはマミさんの死と同じくらい意外で衝撃的な出来事に映るに違いない。

キャラクターの死でもって物語の意外性を成そうとする事自体の是非はこの際脇に置いておくとして、問題としたいのは視聴者によってどこまでが"常識"として"ネタバレ"を許容できるかが大きく異なってしまう点だ。上の二つの例でも、視聴者層が異なる事で常識としてとらえられる情報の範囲に大きな差がある事が明白だ。自分の常識が相手にとっての常識である保証はないのだ。

またマブラヴ、と言うゲームがある。これは最初プレイしていると二昔前のギャルゲーのようなベッタベタな恋愛模様が展開されるのだが、それが後半に行くにしたがって次第に大きく作風を変え、SFロボットモノとなってしまうのだ。
マブラヴはそのシリーズが最近まで発売されアニメ化もされていたため、そういった内容の変化はギャルゲ―マーにとっては常識と言っても良いだろう。私自身、マブラヴオルタナティブの存在を知っている上でゲームをプレイしていたので、そういった驚きや感動は全くといって得られなかった。しかし、マブラヴ本編を発売前から楽しみにしていたファンたちは、作品が本来予想もしなかった方向へと話が進んで行くことを目の当たりにすることで、一番マブラヴと言う作品を楽しめたユーザーだったのだろうと思う。もっとも、続編へと話が繋がる展開で期待させられた直後から発売されるまでの三年以上にわたる時間焦らしプレイをもれなく味わう羽目になってしまうのだが……。
それはともかく、マブラヴ本編と言う作品は、自分にとってはひたすらベタな展開のオンパレードだしキャラクターが一々わざとらしくて正直それほど楽しめたわけではなかった。それでもプレイし続けられたのは、マブラヴ本編のあとに、マブラヴオルタナティブという超名作が控えていたからであって、それが無ければ間違いなく途中で放り出していたに違いない。それを思うと、マブラヴはじつは●●ゲーと言う"ネタバレ"は、むしろ人にプレイを勧める上では知ってもらっていた方が良い情報、つまり「良いネタバレ」と言ってもいいかもしれない。
ならば■■という作品は実は●●ゲー、というおおざっぱな表現ならばすべて良いネタバレなのかと言えばそうではなく、「いつか、届く、あの空に。」と言う作品があるが、あの作品は前半と後半で全く趣の違う作風になっているがその変化を肌で感じられるのがプレイしている上での重大な楽しみの一つだと思う。結局どこまでの情報が良いネタバレで、どこまでの情報からが悪いネタバレとなってしまうのか、明確な線引きをする事は難しそうだ。
ネタバレを避けるためには、その作品の発売日や放送時にはSNSや掲示板と言ったネタバレをしてしまうかもしれない不特定多数の集う場所を覗かないという自衛と、自分が"ネタバレされてしまった"時に作品の楽しみが減ってしまうと感じるような内容をむやみやたらと書かないという思いやりを重ねていくしかないように思う。