Charlotte 視聴感想

面白かったじゃない>挨拶

評判なんてあてにならない!

相変わらず人と比べると二周も三周も周回遅れ気味でアニメを見ているんですが、そのおかげで(弊害ともいう)世間における作品のおおまかな評価というものが完走する前に聞こえてくることが多々あります。もちろん個人的にはネタバレには絶対に触れたくないのでなるべく避けているつもりではあるのですが、漏れ聞こえてきた範囲ではCharlotteに関してはあまりいい噂は耳にしませんでした。
そんな前評判のせいであまりハードルを上げ過ぎるような真似をせずに済んだおかげもあるのでしょうか。若干中休みはあったものの、最初から最後まで全編通して楽しめてしまいました。それはもう、六話が終わって七話冒頭で歩未の死を告げられた時なんて本当に絶叫してしまったくらいw
ともかく一話で物語の進行が尋常じゃない疾走感と情報量の多さをもっているのには驚かされました。当初は乙坂有宇が異能力を使ってカンニングやら意中のあの子と付き合うきっかけづくりに奔走する姿を見て、ゲスい主人公クンがどんな目に遭わされるのかと楽しみにしてました。がそれも最初の内だけであれよあれよとどんどんストーリーが進行していくのは見ていて引き込まれたものです。
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Charlotteのここがすき

ちなみに私の一番好きなシーンは、最終話で癒しの力を奪い去った後で鏡に映った自分の右目を見て、治癒の力を行使するかどうか悩むシーン。元はと言えば自分の私利私欲のために力を好き放題悪用していた有宇が、努力の末に神にも等しい力を自由に行使できる立場になれたにもかかわらず、"奈緒との約束を果たすという"たったそれだけの理由で克己するあの姿を見て『ああ、やっぱりこの作品の主軸は有宇クンの成長物語だったんだな』というのと同時に、『自身の存在証明できる場所が出来てよかったね』となにやらあたたかい気持ちで応援することが出来て、作品に深く接することが出来たように感じます。*1
あとは七話で荒れた有宇を見守り続け、知り合って間もないしそこまで世話を焼く義理もないのに、一線を踏み越えようとした"どうしても必要な場面"で颯爽と現れて手を差し伸べる彼女のかっこよさ、包容力は並大抵じゃなかったですね。天使ちゃんが天使なら奈緒ちゃんは女神ですよ!あんなん惚れてまうやろぉ!
ゲスい主人公クンから偉業を成し遂げられるまでに成長を遂げた有宇ですが、どれだけの困難にぶち当たっても彼が頑張り続けることが出来た理由と言うのは、きっと人類を救わなければならないと兄の様に使命感に目覚めたんじゃなく、ひとえに自分を絶望のドン底から救ってくれた奈緒ちゃんから託された願いごとだったからこそではないかなと思います。彼女の存在を忘れてしまっても、心のどこか深い部分で、ある種の本能的に自分を救い信じて待ち続けてくれている人が存在する事を認識し続けることが出来た。だからこそ成し遂げられたんじゃないのかなぁ、なんて。

他にも素晴らしき親友キャラ、高城も魅力のひとつ。なにせどんな陰鬱な雰囲気でも一瞬で吹き飛ばしてギャグへと変えてしまう高城さゆりんコンビの破壊力は大したものでした。最初はキレ者を思わせるようなビジュアルと登場の仕方から一転、ギャグ要員になったのは新鮮な驚きですw
暴力的だったり陰惨なシーン、さらには家族の不幸など重い話題が少なくないCharlotteを終始たのしく見れたのはは間違いなくこの魅力的なキャラクターたちのおかげでしょう。

どうしてCharlotteの評判は良くないのか

放送当時の評判とかも見てきたんですが、人に拠っては不満点が明確に表れてしまう作品だったようですね。丁度自分もフォロワーさんから"主人公が右目直してループしない部分とか不満だったかも"的なリプを頂いて、実を言うと私が作中で感動した場面の一つが其処だったのですが、なるほどそういう受け取り方もあるんだなと思いました。
では何故Charlotteがこれほどまでに評価と感じ方が分かれてしまっているのか。それはひとえに物語の焦点がぼやけてしまっていた事に起因するのではないかと思います。
Charlotteの物語を一言で表して(もしくはジャンル分けして)欲しいと言われた時、皆さんはどう答えるでしょうか。異能力モノかタイムリープモノか、はたまた群像劇か兄妹愛か。
どれもこれも、その一つのテーマを作品の核に据えて物語が一つ作れてしまう程使い出のある内容ですが、シナリオ上どうしても外せないファクターだったと言うよりはむしろ、純粋にだーまえが好きな(書きたかった)要素で、それを詰め込んでいった結果出来上がったのがCharlotteだった、みたいな印象を覚えました。"◯◯っぽいという褒め方"の是非がだいぶ前に話題になりましたが、それに当てはめるとすると、Charlotteは『ギアスっぽい主人公がリトバスっぽい人たちに絆されてシュタゲみたいにループしてまどマギみたいに神となる』作品だと言えちゃう、みたいな。
つまり、キャッチーな物語的要素を詰め込みすぎてしまったため、それぞれの要素を物語の核に据えて最大限発揮し尽した作品群と比べてしまい、見劣りしてしまうのではないでしょうか。しかも主に後半に集中してしまっているせいで、終盤に急転直下しまくる忙しなさがまるで悪い意味でエロゲ的で、余計につめこみへの不満が引き立っている構成だったような気がします。*2

もう一つは、いつものだーまえ作品の様に全力で泣かせてやろう!!というような物語展開では無かった為(わざとそうした節が見受けられますが)、彼の過去作品の様に心を鷲掴みにされてガクガク揺さぶられるような衝撃を感じ辛かったので、そういう場面を期待していたのであれば肩透かしを食らった感じになるのかなぁ、なんて思ったり。

Charlotteのここがきらい

他にも細かい不満点はいくつかあって、一つは隼翼の頑張りがダイジェスト過ぎて重みが薄れてしまっている感じがしました。どう考えてもお涙頂戴とばかりにいくらでも膨らます事が出来た内容のはずなんですが、それをしなかったのはきっと尺の都合と、あとは主人公は隼翼ではなく、あくまで有宇であると言う事を鑑みての事かなと。

二つ目は、古木の裏切りについて。彼は私の中では名前も覚えていないくらいの印象の薄さだったのですが、そんな彼の裏切りによって有宇や隼翼の日常は崩壊していきます。次々と仲間が傷つき、酷い目に遭わされるのを見て苛立つばかりでした。「こんなどうでもいい奴の為に、どうして!」と。
とはいえ不満の対象は、裏切ったのが許せねぇ!という短絡的なものではありません。なにしろ組織に大きな犠牲が出たきっかけは古木ではあるものの、その直接の原因は裏切り者の家族を救うため相手の要求に素直に従った隼翼の決断にあります。
いくらタイムリープの存在を相手に知られているとはいえ、自分や兄妹のために世界を変えると息巻いてタイムリープを繰り返し、時には驚異となる相手の組織襲撃したり、自身は計画が上手くいかないと分かった途端に幾多の世界線で放りだしたりと、目的の為なら手段を選ばない隼翼にしては甘すぎる対応だったように思います。
正直な話冷たいようですが、私にとっては古木の家族がどうなってしまおうと「興味ない」訳で、どうして見捨てる選択をしてくれなかったのか。
この不満を解消しようとすると、まず浮かぶのは"裏切り者の役目をよりディティールの濃いキャラにする”という方法。
熊耳さんの受難シーンを見ていて、『この為に序盤から濡れ男として出ていたのかよ……チクショウ!!』とだーまえに賛辞と恨み言をまとめて贈りたくなりました。"誘拐拷問されて果ては仲間を護るために自らは命を落としてしまうキャラをこっそり序盤から登場させておく"というセンスのある配役を見せつける一方で、どうして古木のようなどうでもいいキャラを助けなければならなくしてしまったのか。つまり脅される役目がポッと出のモブキャラの運転手Aではなく、熊耳とまでは行かないまでも例えば前泊のような組織の重鎮だったほうが相手の強迫に従わざるを得ない重みと言うか、説得感が出るわけです。
ほかにも、古木との馴れ初めや彼が組織に貢献した内容などを描くことで、彼に同情できる余地を掘り下げて隼翼が古木を見捨てる決断ができなかった理由を補強する方法もアリじゃないでしょうか。もしくは、ここにきてなんだかんだ言って未だ年若い隼翼の青さが出てしまったとか、自分の全てと言っても過言ではないタイムリープ能力を由宇に渡したことで定年後のおじいさんの様に府抜けてしまったとかいう考えも浮かびますが、いずれにせよこのあたりの説明不足のせいでどうも納得し切れずにモヤモヤしながら悲劇を眺める事しかできなかったのでもどかしかったですね。

あとは奈緒についてはもう少し内面に踏み込んでほしかったなぁ、と思ったり。なんせメインヒロインなのに蹴ってるシーンとか蹴られてるシーンばかり思い出しちゃいますからね!ひくなぁっ!!??
でも冗談ともかく、タイムリープ後の由宇を疑うことなく一発で受け止めてしまう彼女の包容力と強さの根源とかを見てみたかった気がします。

ぶれいぶりー・ゆー!

OP曲である"Bravely You"、初めて聞いたときは『なんだか不安になる旋律だなぁ……my soul your beatsより微妙…?』と思っていましたが、何度も聞いて行くうちにかなりお気に入りとなりました。音質的にはそれほどですが。
本編視聴後にbravely youを聞き返すと、そこには有宇の壮大で無謀な挑戦に挑むさまが描かれていたのだとわかり、いやむしろ良いか悪いかは別として、bravely youと灼け落ちない翼という詩の為だけに捧げられたアニメだったような気さえしてますます気に入ってしまいました。
ところで、割と最近気付いたのですが。"Bravely You"……このYouって有宇と掛けてるんじゃないかと感じました。
つまり……"Bravely You"、"ブレイブリーユー"、"がんばれ!有宇"……この曲はその名の通り主人公への応援歌だったんだよ!!AA略
てな感じでOPが本編と言うのはあながち間違いじゃないのかもしれません!?本来アニメOPと言うのはアニメ本編の従属物のはずですから、それらが独立して相互作用を与えあう関係っていうのはなんだか面白いですね!

神にも等しい役を成し遂げた彼らにせめて最後は、幸せな人生を。

最後になりましたが、べるんさんのCharlotteのレビューは深いところまで考えてらっしゃていて大変面白いので、どちらも是非読んでみるとより深くCharlotteを味わうことが出来ること請け合いです!
eroge-pc.hatenablog.jp
eroge-pc.hatenablog.jp

また、実を言うとこの記事はべるんさんに愚痴を聞いてもらってと感想をお話しているうちに叩き台が出来てしまいました。
この場をお借りして感謝致します。いつもありがとうございますー!!

ではまたーノシ

*1:ちなみにこれをべるんさんは”奇跡の否定”と訳されていて、本当にその通りだなぁと納得すると同時にかっちりハマりました。超能力やらタイムリープやら派手な看板に彩られていたものの、きっと一番描きたかったのはこれだろうと。

*2:この事をべるんさんとお話しているととても分かり易くまとめてくださいました。以下twitterより引用させて貰いました。なるほどわかりやすい。 『つまり「視聴者が見てきた物語のある『型』の期待値がまずあって、でもCharlotteはそれに応えてくれなかったから不満になっている」という感じですよね。 いわば、自身の物語経験に引っ張られてしまうと、Charlotteに不満を覚えてしまう事があるのかも』