オーディオ迷宮輪舞曲 ~もうゴールしてもいいよね~

『好きな作品を、良い音で楽しみたい』

はじまりはこれだけのささやかな願い。

「もっと良い音を」という欲求に駆られ走り続けてきましたが、良い音を鳴らす、たったそれだけの事がこんなにも大変なことだとは思いもしませんでしたし、音が変わる変数がこれほど多く奥深い世界だとは予想だにしませんでした。

スピーカーやアンプ、DACをより上級機種にすれば希望は叶うだろうか。
それともケーブルやアクセサリーがボトルネックとなっているのだろうか。
はたまた自分の使いこなしやセッティングが駄目なのだろうか。
いや、そもそもいわゆる優秀音源とは程遠い自分が聴く音楽が良く鳴る事など有り得ないのだろうか。

悩みは尽きず不安と不満に苛まれながらもきっとどこかに音質向上の糸口があるはずだと信じて、あてどもなく自問自答と機材の購入を繰り返していくさまは、さながら海図も羅針盤も持たずに漂流するような心許なさで。

時間とお金と手間をかけても一向に根本的な改善がみられない調子が何年も続きましたが、次第に当初の目的であったはずの作品を楽しむ暇があればそれを全て音質向上への取り組みに注ぎ込むようになり、さすがに手段と目的が入れ替わってしまっている事には自覚的で、そんな自分に嫌気がさしつつも諦めきれずもがく不健康な日々が長らく何年も続きました。

ある時オーディオの神様が不憫に思ったのか、いくつかの出会いがありました。
それがきっかけとなって、最近になって(今年に入ってからですから本当に最近です)ようやく納得のいくオーディオ再生が出来るようになりました。
第一次オーディオ戦線、ここに終息です!……もっとも、まだまだ手を加えようと思えばやりたい部分はいくらでもあるので火種はくすぶっているのですが。

ともあれ、ここではあるオタクがオーディオという沼の深みへと嵌り込んでいく様子を、これまでの取り組みを振り返る備忘録がてら書いてみようと思います。